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シドニー五輪・男子団体・NHK観戦記

*** 日本寄りなのはご容赦ください。 ***

2日前の団体予選。日本は2班に登場。この2班が始まるときには
「(1班で終えていた)ベラルーシの点数が目安」
と誰もが思ったものです。しかし、日本はこのベラルーシを上回る点数は出したものの、ふと見るとアメリカにも上を行かれ・・・。

行かれ・・・?

これって実はベラルーシの点が伸びていなかっただけ?
ということに気付いたときには既に2班4位。3班には中国がいるので、おそらく5位になってしまうであろう。 いやもしルーマニアにも抜かれたら・・・ぎりぎりの6位。いや、韓国は?天津では日本の後ろにぴったりついてたじゃん!!という、あわや予選落ちもという危険な状況に陥り、日本国中の日本男子体操ファンが焦ったことと思います。2位以下の実力は拮抗しているのであり得ないことではなかったのですが、日本が7位以下というのは正直言ってないと信じていた。ので、かなりやばい状況であると気づいたときには、3班が終わるまでひたすらルーマニアと韓国の不幸を祈っていました。
すみません、両国の皆様。
ハラハラさせないでおくれ>日本チーム。

と、いうわけで、なんとか進出した決勝。
いや、持ち点なしって素晴らしい制度ですね?

試合開始前、解説の具志堅さんが一言。
「(メダルの可能性は)50%くらいあると思うんです
50%というのは今の日本に見合った数字と思う。
変に「絶対メダルとって欲しいですね!」とか言わない辺りがさすが具志堅さんですわ。
ちなみに最初の種目の練習中「中村真衣選手、銀メダル」のテロップが流れる。

トップバッターは原田選手。最初の上水平で少しバランスを崩したかな〜というのと、着地一歩以外はまずまず。でもちょっと緊張してるような気もします。9.350。続く藤田選手。具志堅さん「6種目の中では安心して見れる種目ですね」(←個人総合でも言われてた)。
確かに、他は祈りたくなる種目ばかりですもんね・・・(注:藤田選手は最近安定していると思います。が、ファンの間では非常にリスキーな選手というイメージが強く・・・。そこが魅力でもありますが)。9.525。まずまずですよ。どんどん点数上げていきましょう!

「体操の途中ですがここでニュースを」

えっ、何?何が起こったの?と心配して見てみれば
「中村真衣選手が銀メダルをとりました」だって。

さっきテロップ流しただろうが。

中村選手になんら罪はない。と思いつつ数分間を耐える。

その間にきっちり斉藤選手の演技が終了。9.575
まったく、CMあけたら点が入っていたサッカー中継みたいです。
4人目の塚原選手(今回、すべて塚原選手が4番手)は、着地を優先したか降りは伸身の後方二回宙でまとめます。しかし9.650!塚原選手の弱点はつり輪だと思っていたのが、つい昨日のことのようなのに・・・。また、最後の岩井選手はこの種目で種目別決勝に残ったように、まさに日本のつり輪のスペシャリスト。そういう意味では笠松選手のあん馬、斉藤選手の鉄棒なども同じで、彼らが自分の得意種目で決勝に残れなかったのは残念です。そのぶんも岩井選手に頑張って頂きましょう。9.675。で、最初の原田選手の得点を切り捨ててトータル38.425。トップバッターから順調に点数を上げる、理想的な滑り出しですよ!

50%から60%に夢がふくらみました。

ネモフ選手・鉄棒。三種のコバチに伸身トカチェフを取りそろえております。しかもおそろしく安定してる。9.687。
黄旭選手・平行棒。屈伸モリスエ,ヒーリー+ルンプティスと見せ場多し。9.737。しかし黄旭って、なんつーかにくめない顔ですね。
ポール.ハム選手アメリカ最年少18歳、ぴちぴちのゆか。双子の弟で兄はM.ハム。9.600。次代のエースと言われています。
ベレシュ選手・跳馬。ローチェ、着地で前に若干出るも9.687。
ドレヴィン選手・ゆか。予選でゆかだけ演技していたので、どうしたんだろう?と思っていたのですが、よく聞くと足のケガでゆかが出来ないクリュコフの代わりにゆかだけやる選手なのだそうで。知りませんでした。9.350。1種目めを終えたところで、日本3位です。

中国 38.849
ウクライナ 38.461
日本 38.425
ロシア 38.374
ルーマニア 38.299
アメリカ 37.600

ま、まだ1種目ですから・・・焦らず・・・

2種目めの跳馬。予選でも出来の良かった種目です。トップの斉藤選手が9.437の後、笠松選手が素晴らしい着地で9.650。出ました!ガッツポーズ。このへんは安心して見ることが出来ます。
岩井選手は着地がちょっと心配でしたが、予選のときよりも良い出来で9.700。この跳馬、団体のオーダーを組むとき「残る1人は原田か岩井か?」と、真剣に考えました(私が考えてどうするんだっつぅの)。原田選手も価値点の高い技を跳ぶことができます。でも・・・チーム最年長、ケガもあった岩井選手が1回半ひねり(=10.00)をやっていることに感動です。岩井選手の4年間のたゆまぬ努力にはホント、頭が下がります。
塚原選手。着地ちょっと乱れてラインを踏み越してしまいました。しかし9.662。帰ってきて、チームメイトに謝っていたのが印象的です。最初はみんな、顔色悪いけど大丈夫?と思ったけど、好スタートのせいかほぐれてきた感じ。
さて、ラストは藤田選手。2年くらい前からこの藤田選手のローチェを見ていますが、最初のころは結構失敗もありました。それがどんどん完成度が上がってきて・・・。このシドニーでも尻もちついたりはしないだろう、という安心感はありました。しかし、着地をどれくらい止められるか?残念ながら種目別決勝には進めなかったので、なんとかこの団体決勝の場で、これまでの苦労を実らせて欲しい!と、祈る。結局祈ってるのね、藤田選手の時って。祈りが通じたのか?右に一歩はありましたがなんとかとどめる。
点数は?点数は?さっきのベレシュと比べてどうよ?と、勝手に比較。さっきまでは「まだ1種目めよ」と言い聞かせていたのですが(テレビの前で。しかも1人で何を言ってるんだか)、あまりにもこの跳馬までの出来が良いものでいつもの興奮状態に突入9.712。これまたトップの斉藤選手の得点を切り捨てて38.724

70%に夢がふくらみました。

ヤン・ウェイ選手、ゆか。予選では塚原選手が着地に失敗したゆかでの伸身新月面。これをきっちり決めてきます。見た目はいいとこのおぼっちゃん風なのに(関係ない)。しかしこれ、生で見ながらのメモを頼りに書いているのですが、彼の得点をメモしていない。このへんから興奮状態であることがうかがえますね、私(笑)。

中国 77.460
日本 77.149
ウクライナ 76.722
ロシア 76.411
ルーマニア 76.135
アメリカ 75.699

2位に浮上!しかし団体戦では簡単に逆転できる点差です。

最初が原田選手の平行棒、というのはあの天津世界選手権の予選と同じです。あの時は、キャプテンとしてすごくいい働きを見せてくれました。今回も着地わずかに一歩あるも、トップバッターとしてはまずまずの出来。9.450。が、続く藤田選手が・・・。「出すなっ!」と具志堅さんが叫ばれていましたが、倒立でちょっとバランスが崩れ、手を前に出したために連続加点がとれなくなってしまいました。あ〜!しかしこのへんの具志堅さんの解説は、冷静かつ、日本を応援してるって感じで好きです。得点は9.212。ちょっと痛い!続く斉藤選手も、コンビネーションが審議の対象となったらしく、なかなか得点が出ません。

うーん・・・。
うーん・・・・・・。

では、ここでニュースを・・・。

実に長い10分間。
再開した途端、画面に笠松選手の鉄棒(しかも降り)が映ったときは気が遠くなりかけましたさ。アナウンサーによると、斉藤選手の平行棒は9.512。塚原選手は9.537。岩井選手は8.787とのこと。団体戦ではひとつのミスはカバーできますが、この種目では藤田選手のミスをカバーしきれず、逆にこの岩井選手の8.787を切り捨てて37.711
(生放送ではカットされたこれらの演技ですが、後に録画のものを見ました。岩井選手は予選で決めたタナカを抜いて、確実に行こうとしたのですが・・・着地が〜。悔やまれます!)

と、計算している場合ではありません。
画面は鉄棒に進んでいるので、ひとまず平行棒を終わっての順位は考えないことにします。

笠松選手の鉄棒、すばらしい着地で9.637。トップバッターでこの得点!!思わず、笠松選手とともにガッツポーズしそうになってしまいました。はたから見たら挙動不審でしょう。私。続く藤田選手は、落下が心配なデフが入っています。が、これも見事成功!前にも書きましたが、天津世界選手権の代表選考(1999年のNHK杯)でデフが決まった瞬間というのは実にかっこよかった。惚れました。具志堅さんの言葉を借りれば攻めの演技9.700!続く原田選手がコールマンにコバチ2回と3つの離れ技を難なく決めて9.650。安心して見られます。

画面が切り替わって、ベレシュのゆかが流れる。
タンブリングでひねりが入らず、価値点が下がるミス。
と、この時は直後に日本が同じことをしようとは思いませんでした。

塚原選手はコールマン2回の構成でしたが、1回にしてきました。具志堅さんの「(前の選手が成功しているだけに)やってほしかったですねぇ〜」という声にうんうんとうなずきつつ、9.712という点数が出ると「まあ、失敗したら元も子もないし」と思ってしまう。人間ってそんなもの。そしてラスト、斉藤選手は9.762ですばらしい締めくくり(これが予選でできていればなぁ〜っ!)。なんと、あの最初の笠松選手の9.637を切り捨て38.824という素晴らしすぎる鉄棒の出来でありました。

言っちゃなんだが他の種目にわけてあげたい点だった
中国 154.858
日本 153.684
ウクライナ 153.246
ロシア 152.872
ルーマニア 152.795
アメリカ 151.747

2位!!
ウクライナと僅差とはいえ、75%に夢がふくらみました。
しかし。ここで残りがあん馬とつり輪、ならともかくゆかが残っている、ということに一抹の不安を覚えなかったわけではありません。 ゆか。トップバッターの藤田選手が最初のシリーズからラインオーバー・・・。あぁ、みんな落ち着いて〜(お前が落ち着け)と、再び祈る。9.325。続く斉藤選手も2回のラインオーバーで9.312。もともと高得点が出る種目ではないので、1回の演技に2度のラインオーバーがあっては9.300台はいたしかたない。さらに3番手の原田選手は、3本目のシリーズにひねりが入れられず。さっきのベレシュのミスを指摘している場合じゃなかったわけです、日本。9.212

もう、だめだ・・・。
メダルは、ない・・・と、その瞬間思いました。

夢は30%近くまで落ち込みました。

しかしなんとか、これ以上のミスは防がなくては。
塚原選手は、予選で失敗した伸身新月面をぬいての演技。無難に決めていましたが、3本目のシリーズでまたもや痛恨のラインオーバー。9.500。しかし、ラストの笠松選手が鬼気迫る(!)演技で、9.712
ロシアは?ロシアはどうよ?

中国 193.345
ウクライナ 192.057
ロシア 191.538
日本 191.513
ルーマニア 190.771
アメリカ 190.157

なんとロシアとは0.025しか差がありません。
体操では、0.025なんて着地一歩の四分の一。
結果的に日本が4位だたったものの、この瞬間にはロシアも接戦を覚悟したはずです。

夢は50%まで復活しました。

最後の種目、あん馬。
ロシアは平行棒。
どっちが得点が出るかなぁといったらロシアがやや有利と言わざるを得ません。しかし、日本も決して不得意ではない種目のはず。がんばれ・・・と思った途端。トップバッターの原田選手が落下。これまでいい感じで来ていたこの決勝、最後の種目にきてついに落下。でも、ひとつのミスならカバーできる。それが団体戦です。
藤田選手が9.525、斎藤選手が9.550。塚原選手が9.637
おお、みんなすごいよ!と落下が伝染しなかったことに感動。日本時間はちょうど19時前というわけで画面左上にはお天気予報が入っていましたが、これを画面切り替えてやったりしたらNHKは殺されるね、まず間違いなく。ってくらい、試合はクライマックスでした。
ラストの笠松選手。ここまで、団体戦で本当にチームをひっぱってくれた笠松選手です。
が、最後の最後に、唯一のミスが・・・。それでも9.612
しかし。たとえ笠松選手がベストの演技をしていても、ネモフの得点は9.772とすばらしく、日本がロシアを上回ることはなかったと思われるわけで(北の国から調でどうぞ)。

夢は50%にはじまり、50%に終わったと。
いい夢見さしてもらいました。

以上。